国連子どもの権利条約を日本が批准して28年目の2022年、ようやくわが国で「こども基本法」ができました。この法律制定からさかのぼること22年前に、川崎市では子どもの権利に関する日本で最初の総合条例として「川崎市子ども権利条例」を制定しました。子どもたちの意見を聞いて、子どもたちと共に、2年間に200回という会議と集会を開いてつくりあげたのです。以後今日まで、子ども権利条例づくりは各自治体に広がり、全国で81か所(2025年4月現在)に増えてきました。
条例制定が広がる動きは歓迎すべきことではありますが、子どもたちを取り巻く社会状況は年々厳しいものになってきています。不登校の児童生徒数は過去最多の約35万人、いじめの認知件数は約73万件で、小学生のいじめは中学生の約5倍、いじめが最も多い学年は小学校2年生になりました。子どもの自死は4年連続500人を超え、過去最多の529人。児童相談所による虐待相談対応件数は33年連続で過去最多を更新しています。ストレスをため込む子どもたち。ODやリスカなど、自傷行為をしている子どもたちが増加し続けています。ユニセフが2025年に発表した日本の子どもの幸福度は先進36か国中32位という低さでした。生きづらさを抱える子ども・若者が増え続けています。
こんな状況を生み出している背景には、いろいろな要因があるとは思いますが、私は「こどもの権利」に関しての国民の意識の低さも関係しているような気がしてなりません。子どもの権利条約の草案を国連に提案したポーランドにおいて、重要な役割を担った小児科の医師コルチャック先生の言葉に耳を傾けたいと思います。「子どもはだんだんと人間になるのではなく、すでに人間である」。オギャーと生まれた瞬間から権利主体であるひとりの人間なのだ。この考え方が私たちおとなの間でしっかりと共有できていたならば、日本で虐待や体罰はずっと少なくなっているのではないでしょうか。でも残念ながらそうなってはいません。私たちの社会では、まだまだ子どもを「未熟者」「半人前」とみなし、おとなより劣った存在として差別するまなざしが少なくありません。
川崎市の子ども権利条例はその制定時に「子ども市民」「おとな市民」という言葉を生み出し、子どもとおとなは社会を構成する対等なパートナーと位置付けました。2017年に発足した「かわさき子どもの権利フォーラム」は、この子ども権利条例の理念をしっかりと子どもたちや教職員など子どもと関わるおとな、広く市民の皆さまに届け、分かち合おうと様々な活動をしてきました。私たちは学校づくりやまちづくりに、広く子どもたちの声を聴き、その声を活かすことができているでしょうか。この社会において、子どものウェルビーイングを実現できていると言えるでしょうか。
私たちは、子どもたちが「生まれてきてよかった」「生きてるって、楽しいよ」と思える社会、差別や偏見のないまち、そしておとなも幸せでいられる社会の実現に向けて、これからも一歩ずつ、皆さまとともに歩みを進めていきたいと思います。こどもの権利に根差した、「子どもにやさしいまち」をつくっていきましょう。どうぞよろしくお願いいたします。
かわさき子どもの権利フォーラム代表 西野博之

